藤澤桓夫邸跡顕彰碑
2015.03
昭和時代の小説家藤澤桓夫はこの住吉の地に書斎「西華山房」を構え、「大阪文壇の長老」と呼ばれ、多くの作家・文化人が訪れた。その文学サロンとしての大きな文化遺産的価値を顕彰するものである。
木・瓦・格子などに頼らない、よりモダンな表現がそれにふさわしいと考えた。種々の制約条件のある中、多くの人たちに、藤澤桓夫その人とサロン的役割を果たしたこの地を再評価し未来に語り継いでもらいたいとの思いで、当時の門があった、熊野街道に面する三叉路角部に邸跡を記す道標の設置をすると共に、曳家された書斎部に近接して顕彰板や自作陶板による碑を設けた。
顕彰碑は、杉板の木目の柔らかな表情を持たせた堅牢なコンクリート壁とし、その上に「西華山房」のメモリーを継承する金属製庇を重ねた。その切妻棟部には以前の居宅にあった鳩の棟飾りを模し、同じものを離れた道標の頂部にも配して、それぞれが呼応し合うレトリックとなることを意図している。その碑は開かれた方向からの認知度を高めるように、折れ版の多面構成とした。また、顕彰碑に続く部分に、元の邸の前庭・玄関までの正面アプローチにあった生垣や藤澤桓夫が好んだバラの再現を計画した。
単なる文学碑に終わらず、言わば「まちかど文学館」として、地域をはじめ多くの方々に親しまれることを望むものである。
用途 | : | 記念碑 |
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所在地 | : | 大阪市 |
規模 | : | 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造 |